肉食系の植物には力強い生命力を感じる。身近に存在する植物たちは自慢げに花を広げ心地よい香りを漂わせ美しく着飾る。それ故、人間に守られ大切にされているようだ。彼らなりの生き延びる為の策略かもしれない。ところが彼の場合は捕虫器なる落とし穴で虫を捕らえ袋の中にある消化液で吸収する。他の生物から栄養素を取り込むというようなそんなオブラートに包まれた表現で収めるより生き延びる為に喰っているという印象に近い。同じ植物界で同じ虫を対象としているが、ポリネーターとして子孫繁栄に利用するのもいれば捕食の対象として喰らうものもいるのだ。植物のこうした不思議な魅力を独特な世界観で表現する為、異素材を組み合わせている。捕虫器の袋には２種類の色ガラスを用いて溶解時に生じる偶発的な混ざり具合いとその軌跡が光を吸収した際に透けて浮き上がり、その様子は植物特有の葉脈と酷似し生命感を漂わせる。葉と茎に見える部分は木を一本の角材から彫り出し蔓のような滑らかなラインが伸びる。この葉に見えるのは偽葉といい、葉の本体はそこから細長く伸びた先端にある捕虫器にあたる。葉が変形するにも程があるだろう・・・。また企みにほくそ笑むように開けられた口元には蜜の誘惑に靡き佇む虫の運命の一齣を描いた。